ケージのたぬくん。
とあるペットがいた。
その子の名前は「たぬ」くん。
とあるペットショップで、とある家族に買われた。
その子の世界はケージの中だった。
ある日、家族が引っ越す事になった。
たぬは違う世界への期待すらなく、別の家に移った。
だけど、家族はそこにいなかった。
違う家族が、ケージの中へたぬを入れる。
違う家族がご飯をくれるが、怖くて噛みついた。
噛みつかれた違う家族はこりもせずに、またエサを持ってくる。
たぬは怖がるのを諦めた。
たぬは新しい家族になでられることを許した。
新しい家族はある日、引っ越す事になった。
だけどたぬは、また何が起きているのか解っていなかった。
ケージから出された時、たぬはようやくわかった。
また家族が変わるのかな、そう考えたかもしれない。
だけど、新しい家族はついてきた。
次のおうちには、少しだけ大きなケージが用意されていた。
次のおうちではお客さんがたくさん来た。
毎日楽しかったかもしれない。
新しいおうちではついつい楽しくって、毎日毎晩吠えていた。
でも吠えると、いつもなでてくれる人がスリッパで叩く。
その人の前では吠えるのをやめた。
お出かけしたり、病院にいったり、たぬは少しだけケージの外を楽しんだ。
ある日、たぬは立てなくなった。
それからどれ位経つのか、新しい家族はたぬの前から離れようとしない。
たぬはなでられながら、そばにいる家族を見つめ返した。
ケージの入り口は二度と締められることはなく、たぬもケージに戻ることはなかった。
いつもエサをくれたりスリッパで叩く手は、たぬの体をそっとなで続けている。
ただずっとなで続けている。
たぬはそのことだけを覚えていたかもしれない。
たぬは疲れたのか、なでてくれる人の膝の上で眠った。
たぬのおうちは、ケージの中じゃなく、家族の心の中。
たぬ、お疲れ様でした。
これからもずっと一緒だから。
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